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社会福祉施設の感染症の報告基準|ノロ・インフル10名以上で報告

2026-10-27書いた人: 茂呂史生(Happiter株式会社)
障害福祉サービスの事業所や放課後等デイサービスでノロウイルスやインフルエンザが広がった時、報告の基準になるのは、平成17年2月22日の国の通知「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」です。同じ感染症や食中毒の患者か、それが疑われる人が10名以上または全利用者の半数以上になった時などに、施設長が市町村等の社会福祉施設等主管部局へ人数・症状・対応状況等を報告し、あわせて保健所に報告して指示を求めます。対象になる事業所、気づいてから報告するまでの流れ、記録に残すこと、ノロウイルスの嘔吐物の処理を、国の通知と厚生労働省のQ&A、長野県の案内で整理します。
出典: 「社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について」(平成17年2月22日健発第0222002号・薬食発第0222001号・雇児発第0222001号・社援発第0222002号・老発第0222001号。以下「報告の通知」)(厚生労働省 法令等データベース https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta5127&dataType=1&pageNo=1)、厚生労働省「ノロウイルスに関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html)

報告の基準:ア・イ・ウのどれかに当たった時

報告の通知の記の4は、次のア、イ又はウの場合に、施設長が市町村等の社会福祉施設等主管部局へ迅速に、感染症又は食中毒が疑われる者等の人数、症状、対応状況等を報告し、あわせて保健所に報告して指示を求めるなどの措置を講ずる、としています。

基準報告の通知の文言
ア同一の感染症若しくは食中毒による又はそれらによると疑われる死亡者又は重篤患者が1週間内に2名以上発生した場合
イ同一の感染症若しくは食中毒の患者又はそれらが疑われる者が10名以上又は全利用者の半数以上発生した場合
ウア及びイに該当しない場合であっても、通常の発生動向を上回る感染症等の発生が疑われ、特に施設長が報告を必要と認めた場合

イは「10名以上」と「全利用者の半数以上」のどちらかで当たります。利用者の少ない事業所では、10名に届く前に半数以上に当たることがあります。ウは施設長の判断による報告で、ア・イの人数に届かなくても、いつもの広がり方を上回ると疑われる時が対象です。誰を数えに入れるかに迷った時は、事業所の中で数え方を決めてから動くより、その時点の人数のまま保健所に相談するほうが早く進みます。厚生労働省のQ&Aも、施設で発生した時は速やかに最寄りの保健所に相談するよう書いています。

令和5年4月28日の一部改正の通知は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症になった後も、報告の通知の「感染症」には新型コロナウイルス感染症が含まれる、と添えています。

出典: 報告の通知 記の4、「『社会福祉施設等における感染症等発生時に係る報告について』の一部改正について」(令和5年4月28日)(https://www.pref.nagano.lg.jp/matsuho/gyomu/kenko/documents/tuuchi-170222.pdf)(長野県のサイトに掲載)、ノロウイルスに関するQ&A Q24

対象の事業所と報告先

報告の通知の別紙「対象となる社会福祉施設等」は、【障害関係施設】として次を挙げています(2026年10月27日の時点で、厚生労働省の法令等データベースに載っている別紙)。

生活介護・就労継続支援・共同生活援助などの事業所や、児童発達支援・放課後等デイサービスの事業所は対象です。居宅介護など、訪問系のサービスだけを提供する事業所は外れます。

報告先は、市町村等の社会福祉施設等主管部局と保健所の2つです。報告を受けた主管部局と保健所は情報を交換し、保健所は必要に応じて感染症法第15条に基づく積極的疫学調査などを行います。これとは別に、医師が感染症法や食品衛生法の届出基準に当たる患者を診断した時は、医師がそれぞれの法律に基づいて保健所等へ届け出ます。

自治体によっては、事故報告の要領の中にも感染症・食中毒の報告が入っています。報告の範囲・期限・報告先の比べ方は、障害福祉の事故報告の記事にまとめています。

出典: 報告の通知 記の6・7・9・別紙

気づいてから報告するまでの流れ

報告の通知の記の1〜5を、事業所の動きの順に並べると次のとおりです。

  1. 施設長へ: 職員が利用者の健康管理の中で感染症や食中毒を疑ったら、速やかに施設長に報告する。施設長は必要な指示を出す(記の1)
  2. 事業所の中での対応: 医師・看護職員は速やかに対応する。医師・看護職員その他の職員は、有症者の状態に応じて、協力病院をはじめ地域の医療機関等と連携する(記の2)
  3. 記録: 有症者の状況と、それぞれに講じた措置等を記録する(記の3)
  4. 報告: ア・イ・ウに当たれば、主管部局と保健所へ報告し、指示を求める(記の4)
  5. 検体: 報告した事業所は、原因の究明のため、診察医等と連携して血液・便・吐物等の検体を確保するよう努める(記の5)

日頃の備えとして、記の8は、職員の健康管理、職員や来訪者の健康状態によっては利用者との接触を制限すること、手洗いやうがいの励行、職員を対象にした衛生管理の研修を定期的に行うことを挙げています。看護職員のいない事業所は、1と2を誰が受け持つかを、感染症の指針や連絡体制の表に名前で書いておくと、当日に迷いません。委員会・指針・研修・訓練の中身は、感染対策委員会・研修・訓練の記事にあります。

出典: 報告の通知 記の1〜5・8

記録に残すことと、報告様式の例

報告の通知が求める記録は、有症者の状況と講じた措置等です。何を書いておけばよいかは、自治体の報告様式が手がかりになります。長野県松本保健福祉事務所(保健所)は、まず電話で連絡し、そのうえで報告様式と施設見取り図をメールかファクシミリで送るよう案内し、患者一覧表(ラインリスト)などの提出をお願いすることがある、としています。報告様式は保育所とそれ以外で分かれていて、障害福祉の事業所が使うのは「保育所を除く入所・通所施設用」です。この様式(エクセル)の主な欄は次のとおりです。

その場の記録は、この欄に合わせて1人1行で「名前・発症の日時・症状・受診と診断・最後に来所した日・とった措置」を残しておくと、第1報も第2報も記録から写すだけで書けます(Happiter株式会社の整理です)。「たしか昼ごはんの後だった」は、3人に聞くと3通りの時刻になります。

出典: 長野県松本保健福祉事務所「社会福祉施設等における感染症発生時等に係る報告について」(https://www.pref.nagano.lg.jp/matsuho/gyomu/kenko/syudanhokoku.html)と同ページの報告様式、報告の通知 記の3

ノロウイルスの嘔吐物の処理:約200ppmと約1,000ppm

厚生労働省のノロウイルスに関するQ&A(2026年10月27日の時点で最終改定は令和3年11月19日)は、毎年11月頃から2月の間に、乳幼児や高齢者の間でノロウイルスによる急性胃腸炎が流行する、としています。吐ぶつやふん便を処理する時の手順は次のとおりです(Q20)。

  1. 使い捨てのガウン(エプロン)、マスク、手袋を着ける
  2. ウイルスが飛び散らないように、ペーパータオル等で静かに拭き取る(市販の凝固剤等も使える)
  3. 次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約200ppm)で浸すように床を拭き取り、その後に水拭きする
  4. 拭き取ったペーパータオル等はビニール袋に密閉して捨てる。袋には、廃棄物が十分に浸る量の次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度約1,000ppm)を入れるのが望ましい
  5. 乾くと空中に漂うので、乾かないうちに速やかに処理する。処理の後は、ウイルスが屋外に出ていくよう空気の流れに注意しながら十分に換気する

亜塩素酸水を使う方法も、Q&Aに濃度つきで書かれています。家庭用の塩素系漂白剤でも代用でき、使う時は「使用上の注意」を確かめます。次亜塩素酸ナトリウムには金属を腐食させる性質があるので、ドアノブなどを消毒した後は薬剤を十分に拭き取ります(Q23)。リネン類は、下洗いの後、85℃・1分間以上の熱水洗濯が適しています(Q21)。Q&Aは、12日以上前にノロウイルスに汚染されたカーペットを通じて感染が起きた例も挙げています。処理の道具は1つの袋にまとめて置き場所を決め、全員が知っている状態にしておきます。

出典: ノロウイルスに関するQ&A Q19〜Q21・Q23
この記事は国の通知と自治体の公表資料、厚生労働省のQ&Aを読んで整理したものです。報告の様式・連絡の方法・報告先の窓口は自治体で異なります。所在地の市町村と保健所の案内を確認してください。
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AI×ICT伴走研修(全20回)
全20回(各60分・1事業所単位・半年〜1年)の伴走研修を行っています。有症者の状況と講じた措置をその場で残す考え方は、第10回「ICTでヒヤリハットを記録・振り返り 〜小さな"ヒヤリ"を、命を守る"データ"へ〜」で扱います。20回のタイトルと料金は研修のページに。
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茂呂史生
茂呂史生 Happiter株式会社 代表。2005年から訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム・就労支援を自分の手で立ち上げ、4社を経営。著書『世界を変える子どもたち』。

この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。報告の様式と連絡先は、所在地の市町村と保健所の案内を確認してください。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。