障害福祉の避難訓練は年何回?非常災害対策と消防計画
出典: 指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号。以下「基準省令」)第70条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171)、消防法施行規則 第3条第10項・第11項(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006)、栃木県保健福祉部指導監査課「運営指導における主な指摘事項について ー指定障害福祉サービス事業所等ー」(R8.3.31。以下「栃木県の資料」)PDF p.13(https://www.city.tochigi.lg.jp/uploaded/attachment/68666.pdf)(栃木市のサイトに掲載)
基準で決まっていること:計画・周知・訓練
基準省令の第70条(非常災害対策)は、3つの項でできています。
| 項 | 決まり |
|---|---|
| 第1項 | 消火設備などの必要な設備を設け、非常災害に関する具体的計画を立て、関係機関への通報・連絡体制を整え、それらを定期的に従業者に周知する |
| 第2項 | 非常災害に備えるため、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行う |
| 第3項 | 訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努める |
第70条は療養介護の条文で、生活介護は第93条、就労継続支援B型は第202条、共同生活援助(グループホーム)は第213条で準用します。児童発達支援は児童の基準の第40条に同じ3つの項があり、放課後等デイサービスは第71条で準用します。
計画に入れる項目は、青森市の資料が、国の通知(平成28年9月9日障障発0909第1号)に示す具体的な項目として挙げています。立地条件、災害に関する情報の入手方法、災害時の連絡先と通信手段、避難を始める時期と判断基準、避難場所・避難経路・避難方法、災害時の人員体制と指揮系統、関係機関との連携体制です。札幌市の資料も、ほぼ同じ項目を例にしています。青森市の令和7年度の運営指導では、文書指導の件数が最も多かったのが「非常災害対策」でした。ほかの自治体の指摘の例は、運営指導の指摘事項の記事にまとめています。
出典: 基準省令 第70条・第93条・第202条・第213条、児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号。以下「児童の基準」)第40条・第71条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100015)、青森市福祉部指導監査課「指定障害福祉サービス事業者等に対する指導監査について」(令和7年度集団指導 資料2・令和8年3月。以下「青森市の資料」)スライド3〜4(PDF p.4〜5)(https://www.city.aomori.aomori.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/832/080508_kansa.pdf)、札幌市障がい福祉課「障害福祉サービス事業所等の防災計画策定について」(令和4年度集団指導。以下「札幌市の資料」)p.3(https://www.city.sapporo.jp/shogaifukushi/jiritsushien/documents/bousaikeikaku.pdf)
年何回か:消防法の年2回と、自治体の資料
基準省令は「定期的に」までで、回数は書いていません。よく聞く「年2回」は、消防法の側から来ています。
- 消防法施行規則 第3条第10項: 消防法施行令の別表第一(六)項などの防火対象物の防火管理者は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行う。第11項で、訓練をする時は前もって消防機関に通報する
- 障害福祉の事業所は(六)項: (六)項ロに、避難が困難な障害者等を主として入所させる障害者支援施設・短期入所・共同生活援助の施設が、(六)項ハに、児童発達支援・放課後等デイサービスを行う施設や、生活介護・自立訓練・就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援・共同生活援助(ロに当たるものを除く)を行う施設が挙がっています
- 防火管理者が要るかは収容人員で決まる: 消防法施行令 第1条の2第3項で、(六)項ロは収容人員10人以上、(六)項ハは30人以上。収容人員は「出入し、勤務し、又は居住する者の数」なので、利用者だけでなく職員も数に入ります
防火管理者を置く規模なら、消防法の決まりとして年2回以上です。置かなくてよい規模でも、指定権者が回数を示していることがあります。栃木県の資料は、障害児入所施設と児童発達支援センターは児童福祉施設の設備及び運営に関する基準で避難・消火訓練を少なくとも毎月1回、それ以外の施設・サービスは消防法に基づいて避難訓練・消火訓練を年2回以上行うよう求めています。
全国どこでも同じ「年◯回」が障害福祉の基準にあるわけではなく、建物の用途と規模、指定権者の運用で決まる、と考えておくのが安全です。ビルの一部を借りている事業所は、建物全体が(十六)項イ(複合用途)として扱われ、数え方が変わることもあります。所在地の指定権者の集団指導資料と、管轄の消防署で確かめてください。
出典: 消防法施行規則 第3条第10項・第11項(前掲)、消防法施行令 第1条の2第3項・別表第一(六)項・(十六)項(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037)、栃木県の資料 PDF p.13
消防計画・避難確保計画・BCPとの関係
札幌市の資料は、事業所が作る防災の計画を4つに分けて示しています。
| 計画 | 対象になる事業所 | 対象の災害 | 計画のほかに要ること(主なもの) |
|---|---|---|---|
| 非常災害対策計画 | すべての入所・通所系事業所 | 想定される災害すべて | 訓練・防災教育 |
| 避難確保計画 | 浸水想定区域内・土砂災害警戒区域内の入所・通所系事業所 | 風水害・土砂災害 | 市への報告、訓練・防災教育 |
| 業務継続計画(BCP) | すべての障害福祉サービス事業所等 | 自然災害・感染症のまん延など | 従業者への周知、研修・訓練、定期的な見直し |
| 消防計画 | 要件を満たす入所・通所系事業所 | 火災 | 消防局への届出、消防訓練 |
- 消防計画: 札幌市の資料は、施設の用途や規模、収容人員などによって防火管理者の選任と消防計画の作成が必要になり、そのときは消防局への届出が要る、消防計画に基づく自衛消防訓練の前には自衛消防訓練通報書の届出が要る、としています。消防法施行規則でも、訓練の前に消防機関へ通報することになっています(第3条第11項)
- 避難確保計画: 水防法 第15条の3と土砂災害防止法 第8条の2で、市町村地域防災計画に名称と所在地を定められた要配慮者利用施設の所有者・管理者は、利用者の避難の確保のための訓練その他の措置に関する計画を作り、市町村長に報告します。どちらの法律でも、計画に基づく訓練を行い、その結果も市町村長に報告します(水防法 第15条の3第5項・土砂災害防止法 第8条の2第5項)。栃木県の資料は、避難確保計画、または避難確保計画の内容を盛り込んだ非常災害対策計画を作って市町に報告するよう求め、避難確保計画に基づく訓練をしていない、その結果を市町に報告していない、という指摘の例も挙げています。札幌市の資料は、非常災害対策計画に洪水(土砂災害)時の防災体制・避難誘導・教育訓練などの項目を書き足す形も示しています
- BCP: 青森市の資料は、非常災害については、単に避難訓練ではなく、業務継続計画に基づく内容となるような研修・訓練を計画して行うよう求めています
自分の事業所が地域防災計画に載っているかどうかは、市町村の防災の担当に聞くのが早道です。
出典: 札幌市の資料 p.2・p.5〜6・p.11、水防法 第15条の3(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000193)、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 第8条の2(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/412AC0000000057)、栃木県の資料 PDF p.12〜13、青森市の資料 スライド9(PDF p.10)
訓練記録に残す項目
栃木県の資料は、主な指摘事項に「避難訓練を実施した記録がない」を挙げ、訓練をした時は実施日時・参加者・内容などを記録して保管するよう求めています。青森市の資料も、計画に基づいて避難訓練を行い、実施内容の記録を残すよう書いています。
次は、上の資料と条文をもとにした Happiter株式会社 の整理で、国や自治体の様式ではありません。
- いつ・何を想定したか: 実施日時、想定した災害(火災・地震・水害など)と時間帯(日中・夜間)
- 誰が参加したか: 職員と利用者の人数、地域住民への呼びかけと参加の有無(第70条第3項の「連携に努める」の跡になります)
- 何をしたか: 通報・初期消火・避難誘導・救出などの内容、避難にかかった時間と使った経路
- 届出・報告: 消防署への事前の通報、避難確保計画に基づく訓練なら市町村へ結果を報告した日
- 直したこと: うまくいかなかった所と、計画やマニュアルに反映した中身
- 今年度の何回目か: 前回の実施日を書いておくと、次の期限がすぐ分かります
避難訓練の記録は、たいてい訓練そのものより、探すほうに時間がかかります。計画・訓練記録・消防署への届出の控えを、年度ごとに1つのフォルダ(紙なら1冊)にまとめておくと、運営指導で「前回はいつですか」と聞かれても、すぐ出せます。非常災害対策を含む運営指導の確認項目は、運営指導 自己点検チェックリストで、スマホで上から順に点検できます。
出典: 栃木県の資料 PDF p.13、青森市の資料 スライド4(PDF p.5)、基準省令 第70条第3項
この記事は国の法令と自治体の公表資料を読んで整理したものです。訓練の回数・記録の様式・届出の方法は、建物の用途や規模、自治体によって異なります。所在地の指定権者と管轄の消防署の案内で確認してください。
「通知が来てから当日までの段取り表」と「確認される書類の一覧(7サービス)」を、メールアドレスだけで受け取れます(数分以内にURLをお届けします)。
運営指導の自己点検チェックリスト(7事業のタブ)。非常災害の計画・避難訓練の記録を含む確認項目を、スマホで上から点検して、要改善だけToDoにできます(根拠の条文つき・登録なし)。
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この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。訓練の回数と記録の様式は、所在地の指定権者と消防署の案内を確認してください。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。
