障害者虐待の通報義務|職員が「疑い」で通報する理由
出典: 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」)第2条・第6条・第15条〜第19条(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/423AC1000000079)、厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月。以下「手引き」)p.11(PDF p.15)(https://www.mhlw.go.jp/content/001282170.pdf)
第16条が決めている4つのこと
| 項 | 条文の中身 |
|---|---|
| 第1項 | 職員等による虐待を受けたと思われる障害者を見つけた人は、速やかに市町村に通報しなければならない |
| 第2項 | 虐待を受けた障害者本人は、市町村に届け出ることができる |
| 第3項 | 刑法の秘密漏示罪などの守秘義務の規定は、通報を妨げるものと解釈してはならない(虚偽の通報と過失による通報を除く) |
| 第4項 | 職員は、通報をしたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いを受けない |
ここでいう「障害者福祉施設従事者等」は、障害者支援施設や障害福祉サービス事業、相談支援事業などの業務に従事する人です(第2条第4項)。手引きは、対象の事業として、居宅介護から共同生活援助までの障害福祉サービスのほか、移動支援、地域活動支援センター、障害児通所支援事業、障害児相談支援事業などを挙げ、この法律の障害者には18歳未満の人も含まれる、としています。児童福祉施設の入所者への虐待には児童福祉法が適用されます(18歳以上で障害者総合支援法の給付を受けながら入所している場合を除く)。
虐待の種類は第2条第7項の5つで、手引きは身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、放棄・放置、経済的虐待と呼んでいます。第6条第2項は、職員に、虐待を発見しやすい立場にあることを自覚して早期発見に努めることも求めています。
出典: 障害者虐待防止法 第2条第4項・第7項、第6条第2項、第16条、手引き p.5〜6(PDF p.9〜10)
事実の確認を待たない理由
手引きは、通報の義務を、虐待の事案を事業所の中で抱え込まず、市町村・都道府県の事実確認調査を通じて早く見つけ、早く対応するための決まりだと説明しています。読み取れるのは次の4点です。
- 虐待かどうかを決めるのは事業所ではない: 疑いを見つけた事案が虐待であったかどうかは第三者が認定することで、事実が確認できていなくても通報はできる(p.19)
- 中だけで確かめて終わらせると、通報義務に反する: 市町村に通報せず、施設の中だけで事実確認を進めて事態を収めてしまうと通報義務に反するので、必ず市町村に通報したうえで行政と連携して進める(p.28)
- 言い換えで終わった例がある: 職員が報告したのに設置者・管理者が通報せず、「不適切な支援」と言い換えて内部の職員指導だけで終わらせた事例や、事実を隠そうとした事例では、職員や元職員の通報から行政の調査につながったものが少なくない(p.11〜12)
- 軽いうちほど、守れるものが多い: 虐待が軽微な段階で通報できれば利用者の被害を最小限に留められ、虐待をした職員にもやり直しの道が残る(p.4)
「もう少し様子を見てから」は、会議でいちばん反対されにくい一言です。条文の「速やかに」は、その一言を待つ書き方になっていません。
出典: 手引き p.4(PDF p.8)・p.11〜12(PDF p.15〜16)・p.19(PDF p.23)・p.28(PDF p.32)
通報した職員を守る決まり
- 守秘義務は通報を止めない: 刑法の秘密漏示罪などの守秘義務の規定は、通報を妨げるものと解釈してはならない(第16条第3項)
- 不利益な取扱いの禁止: 通報したことを理由に、解雇その他不利益な取扱いを受けない(第16条第4項)。手引きは、除かれる「過失」を、一般の人なら虐待だったと考えることに合理性がない場合と説明し、通報を理由にした解雇などの法律行為は民事上無効と解される、としています
- 通報した人は特定されない: 通報を受けた市町村の職員は、職務上知った事項で、通報した人を特定させるものを漏らしてはならない(第18条。報告を受けた都道府県の職員も同じ)
- 匿名でも通報できる: 手引きは、匿名でも通報できること、身元が分からないように通報できることを、研修などで職員に伝えるよう求めています
手引きは、通報した職員に施設の側が損害賠償を求めた事案も挙げ、通報しようとする職員を萎縮させかねず、法の趣旨に沿わない、と書いています。公益通報者保護法による保護もあります。
出典: 障害者虐待防止法 第16条第3項・第4項、第18条、手引き p.12(PDF p.16)・p.28(PDF p.32)
事業所の中の流れ:管理者・虐待防止責任者・委員会
手引きは、職員がとるべき通報の手順を次のように示しています。
- 虐待を受けたと思われる障害者を見つけたら、速やかに、市町村に置かれた障害者虐待防止センターに通報する
- 法人・事業所が「通報の手順」などを決めている場合は、直属の上司や管理責任者にまず報告し、通報してもらうことでもよい
- 上司や管理責任者に報告したのに通報されなかった時は、うやむやにせず自分で通報する。期間を長くおかないこと
- 事実が確認できていなくても通報はできる
- 通報した人に不利益が生じないようにする
通報先は、虐待を受けた利用者の支給決定をした市町村の窓口です。通報を受けた市町村は、事業所の所在地の都道府県に報告します(第17条)。事実確認の調査では、勤務表・個別支援計画・介護記録などの提出を求められるので、事業所は協力します。
事業者には、職員の研修や苦情を受け付ける体制など、虐待を防ぐための措置が求められています(第15条)。手引きは、通報とその後の対応の手順を日頃から明らかにしておくことが、委員会や行動指針を形だけにしない、と書いています。手引きに載っている職員セルフチェックリスト(全国社会福祉協議会の検討委員会の版)にも、他の職員が虐待と思われる行為をしている場面に出くわしたことがあるか、それを容認した(注意できなかった)ことがあるか、という問いが入っています。委員会と研修の回数、議事録に書く項目は、虐待防止委員会の議事録と研修記録の記事にまとめています。
次は、手引きの手順をもとにした私たちの例で、国の様式ではありません。
- 見た・聞いた・疑った職員は、その日のうちに管理者か虐待防止責任者に伝える。自分で市町村に通報してもよい
- 管理者は、虐待かどうかを事業所で決めずに、支給決定をした市町村に通報する
- 伝えても通報されない時は、職員が自分で通報する
- 掲示: 手引きの掲示物の例には、事業所の虐待防止責任者と、市の窓口・障害者虐待防止センター・基幹相談支援センターの連絡先(日中と休日夜間)が並んでいます。電話番号は市町村のホームページで確かめて書く
- 研修: 通報の義務、匿名でも通報できること、通報した人が守られることを毎年伝え、記録に残す
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出典: 障害者虐待防止法 第15条・第17条、手引き p.19(PDF p.23)・p.28〜29(PDF p.32〜33)・p.48(PDF p.52。掲示物の例)・p.55(PDF p.59。職員セルフチェックリスト)
この記事は国の法律と手引きを読んで整理したものです。通報先の窓口・受付の時間は市町村によって異なります。所在地と、利用者の支給決定をした市町村の案内を確認してください。
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この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。通報先の窓口は市町村によって異なります。所在地の市町村の案内を確認してください。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。
