就労継続支援B型の報酬区分(令和8年度改定) — 平均工賃月額の基準額が3千円上がる仕組み、計算の仕方、工賃向上計画で見られる点
就労継続支援B型の基本報酬は「前年度の平均工賃月額」の区分で決まる
サービス費(Ⅰ)〜(Ⅲ)は、利用定員、人員配置、前年度の平均工賃月額の3つで算定します。人員配置は(Ⅰ)が利用者6人に職員1人以上、(Ⅱ)が7.5人に1人以上、(Ⅲ)が10人に1人以上で、いずれも工賃向上計画を作成していることが前提です。平均工賃月額によらず利用定員と人員配置で算定するサービス費(Ⅳ)〜(Ⅵ)は、今回の基準額の見直しとは関係しません。
出典: 厚生労働省「実施上の留意事項について」(令和8年度改定・新旧対照)p.287〜289(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)
平均工賃月額に応じた8段階の区分(4万5千円以上〜1万円未満)は令和3年度改定で導入されました。令和6年度改定では区分はそのまま、高い区分の単価を上げ、低い区分の単価を下げる見直しと算定式の変更が行われました。
出典: 厚生労働省「令和3年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(令和3年2月4日)p.9(https://www.mhlw.go.jp/content/000759620.pdf)、「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」p.31(https://www.mhlw.go.jp/content/001216034.pdf)
令和8年度改定で何が変わったか(令和8年6月施行)
見直しの理由は、令和6年度に算定式が変わったことで平均工賃月額が約6千円上昇し、想定以上に高い区分の事業所が増えたことです。そこで区分の基準額をそれぞれ3千円引き上げました(引き上げ幅は上昇幅の2分の1)。配慮措置は3点です。
- 令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は、見直しの対象外
- 区分が下がる事業所の基本報酬の減少額が3%程度に収まるよう、中間の区分を新設
- 「1万円以上1万5千円未満」と「1万円未満」の間の基準は引き上げず据え置き
出典: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」(令和8年2月18日)p.8(https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf)
区分の呼び方と単位数の例: サービス費(Ⅰ)・定員20人以下
告示では区分は(一)〜(十四)の通し番号ですが、厚生労働省の概要資料・Q&A・システム表示では中間区分を(A)〜(F)、従来の区分を(一)〜(八)と表記するため、この記事もそれにそろえます。
出典: こども家庭庁・厚生労働省告示第5号(令和8年)p.43〜44(https://www.mhlw.go.jp/content/001684450.pdf)、厚生労働省「令和8年度報酬改定等に関するQ&A VOL.1」(令和8年3月31日)p.13〜14(https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf)
| 令和8年6月以降の平均工賃月額 | 表記 | 1日の単位数 | 5月までの同じ単位数の基準 |
|---|---|---|---|
| 4万8千円以上 | (一) | 837単位 | 4万5千円以上 |
| 4万5千円以上4万8千円未満 | (A)新設 | 812単位 | — |
| 3万8千円以上4万5千円未満 | (二) | 805単位 | 3万5千円以上4万5千円未満 |
| 3万5千円以上3万8千円未満 | (B)新設 | 781単位 | — |
| 3万3千円以上3万5千円未満 | (三) | 758単位 | 3万円以上3万5千円未満 |
| 2万8千円以上3万3千円未満 | (C・四) | 738単位 | 2万5千円以上3万円未満 |
| 2万3千円以上2万8千円未満 | (D・五) | 726単位 | 2万円以上2万5千円未満 |
| 2万円以上2万3千円未満 | (E)新設 | 705単位 | — |
| 1万8千円以上2万円未満 | (六) | 703単位 | 1万5千円以上2万円未満 |
| 1万5千円以上1万8千円未満 | (F)新設 | 682単位 | — |
| 1万円以上1万5千円未満 | (七)据え置き | 673単位 | 同じ |
| 1万円未満 | (八)据え置き | 590単位 | 同じ |
届出書やシステム上は(C)と(四)、(D)と(五)は別の区分コードです。この表では単位数が同じですが、定員や(Ⅱ)(Ⅲ)によっては違う区分もあります(例: (Ⅲ)定員61〜80人は(C)484単位・(四)483単位)。
計算例です。平均工賃月額3万6千円の事業所(定員20人以下・(Ⅰ))は、5月までは805単位、6月からは(B)の781単位です。差は24単位で、805単位の約3%です。
出典: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」p.9〜17(https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf)、「Q&A VOL.1」p.13〜14(https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf)
見直しの対象外になる事業所と、届出の流れ
対象外は、令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所です。令和5年4月以前に指定を受けた事業所は「令和6年3月の区分」と「令和6年4月の区分」を比べ、変わらないか下がっていれば対象外です。令和5年5月〜令和6年3月の指定は経過措置の期間によって比べる月が変わり、令和6年4月以降の指定は原則として対象です。区分が上がった理由は問われず、届出の失念で5月以降に区分が上がった場合も原則として対象です。
出典: 厚生労働省「Q&A VOL.1」問27〜28(p.12)(https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf)、「別添資料 就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて」p.1〜3(https://www.mhlw.go.jp/content/001683311.pdf)、「Q&A VOL.2」(令和8年7月13日)問3〜4(p.1〜2)(https://www.mhlw.go.jp/content/001722503.pdf)
届出は次の整理です。
- 区分の届出は原則として毎年度4月。令和8年度は基準が変わる6月に改めて届出を行う(4月に6月以降分を同時に提出する扱いも可)
- 対象外の事業所は区分変更の届出の代わりに、「令和6年3月及び令和6年4月の基本報酬区分が分かる書類等」を根拠書類として提出する
- 平均工賃月額1万5千円未満の事業所は区分が変わらないため届出は不要(指定権者が確認)
提出期限や様式は指定権者(都道府県・指定都市・中核市)ごとに違います。
出典: 厚生労働省「実施上の留意事項について」p.291〜292(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)、「Q&A VOL.1」問29〜30(p.12〜14)(https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf)
平均工賃月額の計算の仕方(対象者・除外)
前年度の平均工賃月額は、次の3ステップで出します。
- 前年度の工賃支払総額を出す
- 前年度の「開所日1日当たりの平均利用者数」を出す(前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数)
- 1÷2÷12月で、1人当たりの平均工賃月額を出す
ポイントは4つです。
- 除外する人: 通常の事業所に雇用されている利用者で、復職や労働時間の延長のために一時的に支援を受けている人は計算から除く
- 2千円の上乗せ: 旧式にあった除外要件は廃止。重度者支援体制加算(Ⅰ)を算定している場合は、平均工賃月額に2千円を加えられる
- 前々年度を使える場合: 同一都道府県内の8割の事業所で工賃実績が低下し都道府県が認めた場合や、激甚災害・災害救助法の適用地域で工賃が減少する場合
- 新規指定の事業所: 初年度は平均工賃月額1万円未満とみなして算定(年度途中の指定は初年度と2年度目)。支援開始から6か月たった月からは、開始後6か月間の平均工賃月額で算定できる
出典: 厚生労働省「実施上の留意事項について」p.289〜290、p.292〜293(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)、「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」p.8(https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf)
令和8年6月1日以降に新規指定を受けた事業所は「1000分の984」
令和8年6月1日以降に新規指定を受けたB型事業所は、令和9年度の報酬改定までの間、基本報酬の所定単位数の1000分の984を算定します(既存事業所は従前どおり)。医療連携体制加算(Ⅳ)の利用者や、離島・中山間地域・自治体が客観的に必要として設置する事業所などには、従前の単価を適用する配慮措置があります。
出典: 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」p.19〜20(https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf)、「実施上の留意事項について」p.293(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)
工賃向上計画の位置づけ: 作っていないと(Ⅰ)〜(Ⅲ)は算定できない
根拠は、厚生労働省の『「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針』(最終改正 令和6年3月29日)です。B型事業所は、特別な事情がない限り「事業所工賃向上計画」を作成し、(Ⅰ)〜(Ⅲ)を算定する場合は都道府県(指定都市・中核市)に提出します。計画を作成していない場合、(Ⅰ)〜(Ⅲ)は算定できません。
- 盛り込む事項: 令和8年度までの各年度の目標工賃月額(前年度以上とする)、各年度の具体的方策、その他
- 各年度に前年度の実績で達成状況を点検・評価し、見直した場合は5月末日までに都道府県へ提出
- 計画と工賃実績は、できる限りWAM NETや事業所のホームページで公表
出典: 『「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針』p.7〜10(長野県掲載 https://www.pref.nagano.lg.jp/shogai-shien/kenko/shogai/shuurou/shuuroushien/documents/shishin.pdf )、厚生労働省「実施上の留意事項について」p.291(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)
計画の目標と実績は、目標工賃達成加算(1日10単位)にもつながります。目標工賃達成指導員配置加算の対象事業所が計画の工賃目標を達成した場合に算定でき、目標は「前年度の事業所の平均工賃月額+(前々年度の全国平均−前々々年度の全国平均)」以上が要件です。
出典: 『「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針』p.10〜11(長野県掲載・同上)、厚生労働省「実施上の留意事項について」p.303〜304(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)
計画の様式、提出先、見直しの提出期限は都道府県ごとに違います。
運営指導で見られる点(区分と工賃に関して)
厚生労働省は、運営指導などで年度途中に確認する流れを示しています。事業所の区分が「R8改定後の区分」か「改定なしの区分(1万5千円未満)」なら、届け出た区分と平均工賃月額に齟齬がないかを確認します。「従前の区分(R8改定対象外)」なら、それに加えて対象外の要件と根拠書類(令和6年3月・4月の区分が分かる書類)を確認します。
出典: 厚生労働省「別添資料 就労継続支援B型の基本報酬区分の基準の見直しについて」p.7(https://www.mhlw.go.jp/content/001683311.pdf)
厚生労働省の資料から整理すると、手元にそろえておきたい書類は次の4つです。
- 平均工賃月額の算出根拠(前年度の工賃支払総額、延べ利用者数、年間開所日数、計算の過程)
- 令和6年3月時点と4月時点の区分が分かる書類(令和5年4月・令和6年4月の届出の控え等)と、令和8年4月・5月分および6月以降分の届出書の控え
- 事業所工賃向上計画の提出の控えと、各年度の点検・評価・見直しの記録
- 前年度の工賃実績の報告の控え(障障発第0402001号にもとづく毎年の報告)
出典: 厚生労働省「別添資料」p.7(https://www.mhlw.go.jp/content/001683311.pdf)、「Q&A VOL.1」問30(p.13〜14)(https://www.mhlw.go.jp/content/001683290.pdf)、「実施上の留意事項について」p.289〜292(https://www.mhlw.go.jp/content/001705650.pdf)、「令和6年度工賃(賃金)の実績について」p.1(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001637154.pdf)
運営指導の書類全体は、別の記事でサービスごとに整理しています。関連: 就労継続支援B型の運営指導で見られる書類、運営指導で確認される書類(7サービス比較)
まとめと確認先
- 基本報酬は前年度の平均工賃月額の区分で決まり、令和8年6月から基準額が3千円ずつ上がって中間区分(A〜F)が新設された
- 令和6年度改定の前後で区分が上がっていない事業所は対象外、1万5千円未満は据え置き
- 平均工賃月額は「工賃支払総額÷(延べ利用者数÷開所日数)÷12」。工賃向上計画は(Ⅰ)〜(Ⅲ)の算定要件
区分の判定、届出の期限、計画の様式は指定権者・自治体ごとに扱いが違います。自分の事業所がどの区分になるか、対象外に当たるかの最終判断は、指定権者・自治体・専門家にご確認ください。
「通知が来てから当日までの段取り表」と「確認される書類の一覧(7サービス)」を、その場で受け取れます。
この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。制度の適用は自治体・指定権者の判断が優先します。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。
