Happiter
Happiter › 制度の解説 › 身体拘束の3要件|切迫性・非代替性・一時性と記録

身体拘束の3要件|切迫性・非代替性・一時性と記録

2026-10-27書いた人: 茂呂史生(Happiter株式会社)
障害福祉サービスと障害児通所支援の基準省令は、利用者(児童の基準では障害児)または他の利用者の生命・身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体拘束等を行ってはならない、と定めています。国の手引きは、やむを得ず行う場合も切迫性・非代替性・一時性の3要件をすべて満たす必要があり、その場合でも判断は組織的に、慎重に行う、としています。緊急やむを得ない場合は「支援の工夫のみでは十分に対応できないような、一時的な事態」に限られます。どんな行為が身体拘束に当たるか、3要件の中身、組織で決める手続き、記録と減算、解除に向けた検討を、基準省令・手引き・国の研修資料で順に見ます。
出典: 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号。以下「障害福祉サービスの基準」)第35条の2(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171)、児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第15号。以下「児童の基準」)第44条(放課後等デイサービスは第71条で準用)(https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100015)、厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月。以下「手引き」)p.35(PDF p.39)(https://www.mhlw.go.jp/content/001282170.pdf)

どんな行為が身体拘束に当たるか

手引きは、障害者虐待防止法で「正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」は身体的虐待に当たる行為とされている、と書いたうえで、身体拘束に当たると考えられる行為として次の6つを挙げています。

  1. 車いすやベッド等に縛り付ける
  2. 手指の機能を制限するために、ミトン型の手袋を付ける
  3. 行動を制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる
  4. 支援者が自分の体で利用者を押さえ付けて行動を制限する
  5. 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる
  6. 自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する

一方で、肢体不自由、特に体幹機能障害のある利用者が残存機能を活かせるよう、安定した着座姿勢を保つ工夫としてベルト類で身体を固定する行為は、「やむを得ない身体拘束」ではなく、行わないことがかえって虐待に当たる、と手引きは注意しています。座位保持装置のベルトやテーブルも目的に応じて判断します。ただし、ベルトやテーブルをしたまま長時間放置するような行為は身体拘束に当たる場合もあるので、医師や理学療法士・作業療法士等の意見を踏まえ、使う場面と目的・理由、本人と家族の意見・同意を個別支援計画に書く、とされています。

出典: 手引き p.34〜35(PDF p.38〜39)・p.39(PDF p.43)

3要件は「すべて」満たす時だけ

要件手引きの説明判断の時に確かめること
切迫性利用者本人または他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高い拘束が本人の日常生活等に与える悪影響を考えても、なお拘束が必要なほど、生命または身体が危険にさらされる可能性が高いか
非代替性身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない拘束せずに支援する全ての方法の可能性を検討し、ほかに手法がないことを複数の職員で確認したか。方法は、本人の状態像等に応じて最も制限の少ないものか
一時性身体拘束その他の行動制限が一時的である本人の状態像等に応じて必要とされる最も短い拘束時間を想定したか

手引きは、行動制限が日常化すると「切迫性」「非代替性」「一時性」のいずれも当てはまらなくなり、いつの間にか身体的虐待を続けている状態になりかねない、と書いています。「念のため」は便利な言葉ですが、非代替性の欄に書くと急に心細く見えます。国の研修資料も、事例から見えたこととして、一時性の「最も短い拘束時間を想定する」を「戒め」と書いています。

出典: 手引き p.35(PDF p.39)・p.40(PDF p.44)、厚生労働省「令和6年度障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修」管理者・虐待防止責任者コース講義資料「虐待を防止するための日常の取組について2~身体拘束・行動制限の廃止と支援の質の向上~」(以下「研修資料」)PDF p.19(https://www.mhlw.go.jp/content/001299471.pdf)

組織で決める手続き:会議・計画・説明・相談

  1. 個別支援会議等で組織として決める: 管理者、サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、運営規程で選んだ虐待の防止に関する担当者など、支援方針について権限を持つ職員が出席していることが大切。必要に応じて相談支援専門員の同席も検討する
  2. 個別支援計画に書く: 身体拘束の態様及び時間、緊急やむを得ない理由を記載する。会議で原因となる状況を徹底的に分析し、解消に向けた取組方針や目標とする解消の時期等を、統一した方針の下で決めるため
  3. 本人・家族に十分に説明し、了解を得る
  4. 行政に相談・報告する: 市町村の障害者虐待防止センター等に相談・報告し、支援について理解を得ることも重要。事業所で抱え込まず、関係機関から助言や情報を得られる

研修資料は、拘束のケースが起きた時の動きを、緊急の支援会議を招集して方針を検討する、管理者や虐待防止マネージャー等が状況を把握・共有する、保護者や行政等の関係者へ連絡する、組織として決定する、という1枚の流れにしています。

出典: 手引き p.35〜36(PDF p.39〜40)、研修資料 PDF p.4

記録に残すことと、記録がない時の減算

基準省令は、やむを得ず身体拘束等を行う場合は、その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならない、と定めています(障害福祉サービスの基準 第35条の2第2項、児童の基準 第44条第2項)。手引きが引く国のQ&A(平成31年3月29日の事務連絡 問1)は、ケア記録等に拘束の間の常時の記録を必ずしも求めているわけではなく、個別支援計画に記載がない緊急やむを得ない拘束をした時は、その状況や対応の記載が重要、としています。

記録をしていない場合は、基本報酬が減る身体拘束廃止未実施減算になります。令和3年度の改定で、委員会の定期的な開催・指針の整備・研修の定期的な実施が運営基準に加わり、これらを満たしていない場合も対象になりました。令和6年度の改定で、減算額は5単位から、施設・居住系(共同生活援助など)が所定単位数の10%、訪問・通所系(生活介護・就労継続支援・児童発達支援・放課後等デイサービスなど)が1%に変わりました。減算の期間と改善計画の流れ、ほかの3つの未実施減算との比べ方は、未実施減算4種の記事にまとめています。

研修資料には、入所施設が、拘束をしたその場で日付・開始時間・終了時間・理由(記号でよい)を手書きする書式を居室の扉のボードに掲示し、月末に委員会がまとめる電子の記録表に添えた例が載っています。

出典: 障害福祉サービスの基準 第35条の2、児童の基準 第44条、手引き p.36〜37(PDF p.40〜41)・p.39(PDF p.43)、研修資料 PDF p.12〜13

解除に向けた検討:委員会・指針・研修

基準省令は、身体拘束等の適正化のために、①委員会(テレビ電話装置等を活用してもよい)を定期的に開いて結果を従業者に周知徹底する、②指針を整備する、③従業者に研修を定期的に行う、の3つを求めています。手引きが引く解釈通知は、委員会は法人単位でも設置でき、虐待防止委員会で身体拘束等の適正化を検討しても差し支えない、虐待防止の研修で身体拘束等の適正化を扱えば研修を実施したものとみなしてよい、としています。

研修資料の入所施設の例では、居室の施錠を解くまでに約4年かかっています。施錠時の記録をこまめに残し、ケース会議で施錠時間を短くできないかを話し合い、委員会にも報告して、ユニットの職員が入る時、その他の職員が入る時、外部の人が入る時の順に1か月ずつ施錠をやめ、1か月ごとの評価を委員会で共有しました。研修資料のまとめは、個別支援計画に書いた行動制限の目標は備忘録ではなく、スモールステップでも解除できるよう進める、と結んでいます。

委員会と研修を年度の予定に入れておくなら、義務研修・委員会 年間計画メーカーで、虐待防止・感染対策・BCPと一緒に1枚にできます(登録なし)。

出典: 障害福祉サービスの基準 第35条の2第3項、手引き p.38(PDF p.42)、研修資料 PDF p.6〜10・p.27、研修の資料のページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/chiikikyosei/03kenshyu_00019.html)
この記事は国の基準省令・手引き・研修資料を読んで整理したものです。身体拘束を行うかどうかの判断は、事業所が組織として行います。手続きと様式は、所在地の指定権者の案内を確認してください。
資料2点を、メールで受け取る(無料)
「通知が来てから当日までの段取り表」と「確認される書類の一覧(7サービス)」を、メールアドレスだけで受け取れます(数分以内にURLをお届けします)。
資料2点を、メールで受け取る(無料)
運営指導の、通知が来てからの段取り表と、確認される書類の一覧(7サービス)。
Happiter株式会社(代表 茂呂史生)からメールで届きます。制度改定と道具の新着のお知らせ(月2回まで)も届きます。止めたい時は、届いたメールに返信するだけです。
入力はメールアドレスだけ。このメール欄からお電話をすることはありません。名簿の管理とメールの送信には Google と Make の仕組みを使い、それ以外の第三者には渡しません。個人情報の取り扱い
この記事の内容を、そのまま点検に使う
義務研修・委員会 年間計画メーカー。身体拘束適正化の委員会と研修を、虐待防止・感染対策・BCPと一緒に年度カレンダー1枚に入れ、回数が足りない所は赤で知らせます(登録なし)。
無料の道具を開く(登録なし) →
「うちの職員はパソコンが苦手で…」で、止まっていませんか。
議事録も計画書も、最後は職員が打ちます。その職員が怖がらずに道具を使い始める入口の60分を、研修の第1回「ICTって何? 怖がらずに使える"道具"の話」そのまま・無料で。11月16日(月)10:00〜11:00・Zoom。顔出し・発言は任意、聞くだけでも大丈夫です。参加しても、研修の申し込みは義務ではありません。
11/16(月)の無料体験会に申し込む →
AI×ICT伴走研修(全20回)
全20回(各60分・1事業所単位・半年〜1年)の伴走研修を行っています。20回のタイトルと料金は研修のページに。
20回のタイトルと料金を見る →
茂呂史生
茂呂史生 Happiter株式会社 代表。2005年から訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム・就労支援を自分の手で立ち上げ、4社を経営。著書『世界を変える子どもたち』。

この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。身体拘束の判断は組織で行います。手続きと様式は、所在地の指定権者の案内を確認してください。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。