放課後等デイサービスの開業資金はいくら要るか — 国の調査の「月の支出」と、報酬が翌々月に入る仕組みから運転資金を数える
出典: 厚生労働省・こども家庭庁「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム 資料5、令和7年11月25日)第25表 p.16(PDF p.17)(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001599114.pdf)、東京都国民健康保険団体連合会「令和8年度障害福祉サービス費等の支払日について」(https://www.tokyo-kokuhoren.or.jp/receipt_payment/kanri/6_r8_shogai_payment_date_list.pdf)
国の調査で見る、放課後等デイサービス1事業所の1年の収支
| 項目(1事業所あたり) | 令和6年度決算 | 月にならすと |
|---|---|---|
| 収入 | 3,102.5万円 | 約259万円 |
| 支出 | 2,819.4万円 | 約235万円 |
| うち給与費 | 1,998.3万円 | 約167万円 |
| 収支差 | 283.1万円(9.1%) | 約24万円 |
調査に答えた304事業所の平均で、1事業所あたりの定員は11人、職員数(サービス換算)は5人です。支出のうち給与費が約7割で、残りは「その他」の事業費用686.8万円、減価償却費84万円、委託費29万円などです。収支差率は平均9.1%ですが、中央値は2.7%で、半分の事業所は2.7%以下です(令和5年度は平均7.9%・中央値0.4%)。
この数字は、すでに利用者がいて運営が続いている事業所の平均です。開所したばかりの事業所は、利用者が定員に近づくまで収入がこれより少なく、支出は人員基準で先に決まります。
出典: 同調査 第25表 p.16(PDF p.17)
報酬が入るのは「翌々月」— 請求と入金の流れ
報酬(利用者負担を除いた給付費)は、サービスを提供した月の翌月1日〜10日に国保連へ電子請求し、国保連と市町村の審査のあと、請求した月の翌月に支払われます。支払日は都道府県の国保連によって違い、東京都の国保連は原則15日(土・日・祝日は直後の平日)、名古屋市の手引きは「請求した月の翌月20日頃」としています。
令和8年12月1日に開所した場合の例(東京都の国保連の、令和8年度の支払日):
| 提供した月 | 国保連へ請求 | 入金 |
|---|---|---|
| 12月 | 1月1日〜10日 | 2月15日 |
| 1月 | 2月1日〜10日 | 3月15日 |
| 2月 | 3月1日〜10日 | 4月15日 |
12月・1月の2か月分と、2月前半の支出は、報酬が入る前に払います。さらに、請求が返戻(差し戻し)になると、直して再請求する分(再請求の期限も毎月10日)の入金は1か月以上遅れます。最初の数か月は、請求の誤りで返戻が出ることも見込んでおくと安全です。
出典: 東京都国民健康保険団体連合会「令和8年度障害福祉サービス費等の支払日について」、名古屋市「指定障害福祉サービス事業者等ガイドブック2024」第2章 報酬請求編 p.78〜79・p.84〜85(https://www.kaigo-wel.city.nagoya.jp/view/wel/docs_jigyosya/2024112900018/file_contents/guide2024chapter2.pdf)
運転資金の数え方(4つの手順)
- 月の支出を出す: 人件費は、人員基準で決まる配置から数えます。放課後等デイサービスは、児童指導員または保育士を障害児10人までは2人以上(うち1人以上は常勤)、10人を超えると5人またはその端数ごとに1人追加。児童発達支援管理責任者は1人以上(1人以上は専任かつ常勤)。管理者も置きます(支障がなければ兼務可)。医療的ケアや機能訓練を行う場合は、看護職員・機能訓練担当職員も要ります。ここに家賃・送迎車・水道光熱・保険などを足します
- 入金までの月数をかける: 開所した月から最初の入金まで約2か月半です。月の支出が国の平均並み(約235万円)なら、2か月分だけで約470万円です(試算)
- 利用者が増えるまでの不足を足す: 収入は利用日数に応じて増えますが、人員基準の配置は利用者が少なくても要ります。たとえば収入が国の平均の半分(約130万円)で支出が平均並みなら、その月は約105万円の不足です(試算)。何か月で利用者が集まるかの見込みに、この不足をかけます
- 新規指定の特例と返戻を織り込む: 令和8年6月1日以降に新規指定を受けた放課後等デイサービスは、令和9年度報酬改定までの間、基本報酬が所定単位数の98.2%です(くわしくは新規指定の基本報酬の特例の記事)。返戻で1か月遅れる分も、余裕として見ておきます
出典: 基準省令(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準・平成24年厚生労働省令第15号)第66条・第67条(第7条を準用)(e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100015)、厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」p.19〜23(https://www.mhlw.go.jp/content/001680064.pdf)、同「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年度)放課後等デイサービス給付費 PDF p.48(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001658031.pdf)
開所する前に出ていくお金(国の資料に目安がない部分)
物件の契約金・内装・備品・採用の費用は、地域と物件で大きく変わり、国の資料に目安はありません。基準省令が求める設備は「発達支援室」と、提供に必要な設備・備品等(発達支援室には支援に必要な機械器具等)です(第68条)。そのうえで、自治体が独自の要件を定めている場合があり、ここで費用が変わります。
- 横浜市: 地下・窓のない物件・5階以上・トイレが事業所の外(共用)・旧耐震基準(昭和56年6月以前)の物件などは「設置が望ましくない」として指定を行わない場合がある、としています。トイレの男女別、静養室・面談室のスペース、鍵付きの書庫も求めています
- 西宮市: 指定申請の時に、建築・消防の関係部署との法令適合確認書を出します。新築・改修・賃貸借契約の前に、必ず事前協議を行うよう案内しています
物件は、契約する前に指定権者と建築・消防の確認を済ませ、そのあとで内装の見積もりを取ると、やり直しの費用を避けやすくなります。人は、指定の日から人員基準を満たす必要があるので、採用は申請の準備と並行して進めます。開所前の研修の期間の給与も、開業資金に入れておきます。
出典: 基準省令 第68条、横浜市「障害児通所支援事業の開始を検討されている方へ」(2026年10月8日更新 https://www.city.yokohama.lg.jp/kosodate-kyoiku/oyakokenko/shogaihoken/tushoshinki.html)、西宮市「障害児通所支援事業の指定申請等手続きについて」(https://www.nishi.or.jp/jigyoshajoho/fukushiservice/tetsuzuki/091094820190222.html)
指定日から逆算する準備の時期(自治体の例)
次の3つの自治体では、指定日は原則毎月1日で、申請の締切は指定日の前月〜前々月です。その前に、説明会や事前相談を求めています。
| 自治体 | 申請の前に | 申請の締切 |
|---|---|---|
| 兵庫県 | 事前ヒアリング(予約制)。市町の意見書の手続き | 前々月15日 |
| 西宮市 | 事前協議(指定希望日の3か月前) | 2か月前 |
| 横浜市 | 説明会への参加(例年4月・7月・12月)と、前々月16日〜末日の個別相談 | 前月15日 |
兵庫県は、市町の障害福祉計画に定める必要量に応じて指定するとして、事前ヒアリングまでに市町の意見書の手続きを求めています。必要量を超える地域では、物件や人をそろえても指定されない場合があり得るので、物件を契約する前に確かめます。横浜市は、令和9年2月〜5月に開所を考えている事業者向けの説明会の申込期限を令和8年12月1日17時としています。所在地の指定権者のページで、次の説明会と締切を先に確かめてください。
出典: 兵庫県「障害児通所支援事業の指定申請(指定更新申請)手続き」(https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf10/syougaijishitei.html)、西宮市・横浜市の上記ページ
開設したあとに見られる書類は、運営指導で見られる書類を7サービスでくらべるにまとめています。
この記事は国と自治体の公表資料を読んで整理したもので、金額は国の調査の平均と、それを使った試算です。指定の可否・必要な設備・申請の締切は、指定権者(都道府県・指定都市・中核市など)が判断し、自治体によって異なります。所在地の指定権者に確認してください。
この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。制度の適用は自治体・指定権者の判断が優先します。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。
