運営指導(実地指導)で確認される書類は何か — 国のマニュアル(令和8年6月)で読む「通知から当日まで」の決まり
通知は、原則として1か月前までに届く
マニュアルによると、運営指導の通知は原則として実施予定日の1か月前までに文書で届きます(p.23)。通知に書かれるのは、根拠と目的、日時と場所、指導の担当者、事業所側の出席者(役職名でよい)、準備する書類(原則は原本。写しでも可)、当日の進め方とスケジュールです。
ただし例外があります。書類の改ざんや虐待が疑われる場合などは、あらかじめ知らせると日常の様子を確認できないため、通知なしで行われることがあります(p.23)。日ごろから記録を残しておくことが、いちばんの備えです。
出典: 厚生労働省「指定障害福祉サービス事業者等に対する集団指導・運営指導マニュアル」(令和8年6月)p.23
何を、どこまで見られるか
- 確認は、国の「確認項目及び確認文書」(別添)をもとに行われます(p.16)
- 見られる書類は、原則として前年度から直近の実績のものです(p.20)
- 利用者の記録の確認は、特に必要な場合を除き、原則として3名以内です(p.20)
- 提出は1部。自治体がすでに持っている書類(指定申請で出したもの等)は、出し直さなくてよいのが原則です(p.20)
- 事前提出の資料は必須ではなく、求める場合も必要最小限に、とされています(p.24)
「全部の利用者の記録を何年分も」ではありません。範囲が決まっているので、準備は「前年度から今までの記録を、3名ぶん通しで見直す」が基本になります。
出典: 同マニュアル p.16・p.20・p.24
自己点検は「必要」と書かれている
マニュアルには、「少なくとも確認項目及び確認文書について、事業者等自身による点検が必要です」とあります(p.22)。自己点検の結果は、事前か当日に出すよう求められることがあり、不適切な点が見つかっていれば、当日に原因と改善策を一緒に検討する、とされています(p.24)。
つまり自己点検は「やっておくと有利」ではなく、国が事業者に求めていることです。確認項目は「最低限のチェックポイント」であり、加算の請求については、この一覧に限らず、それぞれの加算の要件を示す書類が別に求められます(p.22)。
出典: 同マニュアル p.22・p.24
確認される書類の例(就労継続支援B型の場合)
別添「確認項目及び確認文書」(令和8年6月8日)では、サービスごとに「確認項目」と「その時に見る書類」が表になっています。就労継続支援B型では22項目、書類はのべ88点です。たとえば次のような書類が並びます。
- 運営規程、重要事項説明書、利用契約書
- 個別支援計画、アセスメント・モニタリングの記録、サービス提供の記録
- 勤務体制一覧表、出勤簿(タイムカード)、従業者の資格証
- 虐待防止委員会の議事録、研修の記録、身体拘束に関する記録
- 業務継続計画(BCP)、非常災害対策の計画、避難訓練の記録
- 苦情の受付簿と対応記録、事故の記録とヒヤリハット
- 請求書・領収書、収支予算書・決算書等の会計書類
放課後等デイサービス・児童発達支援は、根拠が別の通知(こども家庭庁・厚生労働省「指定障害児通所支援事業者等の指導監査について」)で、別紙の「下線が付いた項目(標準確認項目)」以外は特段の事情がない限り確認しない、とされています。
出典: 同マニュアル 別添「確認項目及び確認文書」(令和8年6月8日)/「指定障害児通所支援事業者等の指導監査について」(最終改正 令和7年3月31日)別添1・別紙
どのくらいの頻度で来るか
- 就労継続支援A型・B型、グループホームは、3年に1回以上(p.18)
- ほかのサービスは、指定の有効期間のうちに少なくとも1回(p.18)
- 新しく指定を受けた事業所は、指定から3年以内。就労継続支援A型は半年後を目途に初回(p.18)
- 過去の指導や通報などで重大な問題が疑われる場合は、優先して行われます(p.18)
- 児童発達支援・放課後等デイサービスは、3年に1回以上(児童通知 p.4)
出典: 同マニュアル p.18/児童通知 別添1 p.4
終わったあとに起きること
改善が要る点は、後日、文書で通知されます(p.37)。指導には3つの重さがあります。
- 文書指導: 法令や基準に反している場合。根拠を示したうえで、期限つきの改善報告が求められます
- 口頭指導: 反しているが軽い場合や、文書がなくても改善が見込める場合。改善報告は不要です
- 助言: 反してはいないが、今後のために伝えられるもの。改善報告は不要です
また、著しい基準違反で利用者の安全に危害のおそれがある時や、著しく不正な請求が確認された時は、運営指導を中止して監査に切り替えられます(p.22)。
出典: 同マニュアル p.22・p.37
通知が来てからの段取り(4週間の例)
国の決まりから逆算すると、段取りはこうなります。これは私たちの提案で、実際は届いた通知と指定権者の案内が優先です。
- 通知が届いた日: 日時・出席者・準備する書類・事前提出の締切を書き出す。当日に説明する人を決める
- 4〜3週間前: 自己点検をする。確認文書の一覧で、書類が「どこにあるか」を確かめ、無い物・古い物に印を付ける。利用者の記録は3名ぶんを通しで見る
- 3〜2週間前: 直す所を、期限と担当を決めて直す。直したことは「いつ・何を・なぜ」をそのまま記録に残す
- 1週間前: 求められた事前提出の資料を1部出す。当日の部屋、書類を並べる順番、説明の分担を決める
- 当日: 書類を見せながら答える。分からないことは「確認して後日お答えします」でよい。指摘や助言はその場でメモ
これだけは、しないでください
足りない記録を、あとからさかのぼって作ること。日付を書き換えること。見つかった不備は「今日わかった」と正直に記録して、今日から直すのが、いちばん安全です。マニュアルにも、書類の改ざんが疑われる時は通知なしで運営指導に入れること(p.23)、基準違反が著しい時は監査に切り替えること(p.22)が書かれています。
この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。制度の適用は自治体・指定権者の判断が優先します。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。
