Happiter
Happiter › 制度の解説 › 障害福祉のハラスメント対策|事業所の義務と利用者・家族からの…

障害福祉のハラスメント対策|事業所の義務と利用者・家族からの言動への対応

2026-10-27書いた人: 茂呂史生(Happiter株式会社)
障害福祉の事業所には、令和3年度の報酬改定から、職場のセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを防ぐための方針の明確化等の措置が、指定基準で義務づけられています。解釈通知は、セクシュアルハラスメントには利用者やその家族等から受けるものも含まれる、としています。さらに2026年(令和8年)10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、利用者・家族を含む「顧客等」からのカスタマーハラスメントへの対策が、全ての事業主の義務になりました。一方で国の指針は、障害のある人が社会的障壁の除去を求めること自体はカスタマーハラスメントに当たらない、と明記しています。基準の義務、10月からの措置、利用者・家族からの言動への対応と予防、厚生労働省の研修素材の使い方を、国と自治体の資料で整理します。
出典: 厚生労働省「障害福祉の現場におけるハラスメント対策」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000070789_00012.html)、同ページの事業者向けマニュアル『職員を利用者・家族等によるハラスメントから守るために』(令和4年3月。以下「マニュアル」)(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000937619.pdf)、厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html)

指定基準で決まっている義務

指定障害福祉サービスの基準(平成18年厚生労働省令第171号)は、居宅介護の第33条第4項で、「職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」により従業者の就業環境が害されることを防ぐため、方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない、と定めています。療養介護は第68条第4項に同じ定めがあり、生活介護は第93条で準用しています。児童発達支援は、通所支援の基準(平成24年厚生労働省令第15号)の第38条第4項です。

京都市が掲げる解釈通知の抜粋(居宅介護の例)は、講ずべき措置のうち特に次の2つに留意するよう求めています。

あわせて、顧客等からの著しい迷惑行為には、相談に応じる体制の整備、被害者への配慮(メンタルヘルス不調への相談対応、行為者に1人で対応させない等)、被害防止の取組(マニュアル作成や研修の実施等)が、望ましい取組として示されていました。千葉県も、令和3年度の報酬改定ですべての障害福祉サービス等事業者に義務化された、と案内しています。

出典: 指定障害福祉サービスの基準 第33条第4項・第68条第4項・第93条(https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100171)、児童福祉法に基づく指定通所支援の基準 第38条第4項(https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100015)、京都市「適切な職場環境維持(ハラスメント対策)」解釈通知抜粋(https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/cmsfiles/contents/0000294/294472/besshi5_harassmenttaisaku.pdf)、千葉県「障害福祉の現場におけるハラスメント対策について」(https://www.pref.chiba.lg.jp/shoji/jigyoushamuke/syougai-hara.html)

2026年10月から、カスタマーハラスメント対策も義務に

改正労働施策総合推進法とカスタマーハラスメント防止指針(令和8年厚生労働省告示第51号)が、令和8年10月1日から施行・適用されています。指針は、①顧客等の言動で、②業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの、の3つを全て満たすものをカスタマーハラスメントとしています。顧客等には施設・サービスの利用者及びその家族が含まれ、電話やSNSでのものも対象です。

苦情の全てが当たるわけではなく、社会通念上許容される範囲の申入れは正当な申入れです。また、障害者が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨の意思を表明すること自体は、カスタマーハラスメントに当たりません。

事業主が必ず講じる措置は、リーフレットで10項目に整理されています。

まとまり中身
方針の明確化と周知毅然とした態度で対応し労働者を保護する方針。あらかじめ定めた対処の内容(管理監督者に指示を仰ぐ、可能な限り一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する等)も周知
相談体制相談窓口を定めて周知し、担当者が適切に対応できるようにする
事後の対応事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止
抑止特に悪質なものへの対処の方針を定め、対処できる体制を整える
併せて講ずる措置相談者等のプライバシー保護、相談したこと等を理由に不利益な取扱いをしない

福祉の現場で外せないのは指針の留意点です。対策を講じる際は、障害者差別解消法の不当な差別的取扱いの禁止と合理的配慮の提供義務に留意し、サービスが途絶すると顧客等の生命や心身の健康に重大な影響が及ぶ場合等にも留意する、としています。指定基準にも、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない、という定め(居宅介護の第11条)があります。

出典: 厚生労働省 リーフレット(詳細版)『令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!』(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662580.pdf)、カスタマーハラスメント防止指針 2(1)(4)・4(https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf)、指定障害福祉サービスの基準 第11条(前掲)

利用者・家族からの言動への対応の流れ

マニュアルは、利用者・家族等からのハラスメントを身体的暴力・精神的暴力・セクシュアルハラスメントの3つに分けています。職員アンケートでは2割〜4割が受けたことがあると答え、その半数程度が相談しなかった(内容によって相談しなかったを含む)と答えました。相談がないことは一概に良いこととは言えない、とマニュアルは書いています。流れは次のとおりです。

  1. 相談を受ける: 受付票などで内容と相談者の意向を記録する。本人の了解なしに担当者以外へ共有せず、相談したことで不利益な取扱いをしないと伝える。窓口は男女各1名など、話しやすい形にする
  2. 事実を確かめる: 支援記録などを確かめ、相談者の意向に応じて利用者・家族等にも状況を聞く。第三者に聞く時は相談者の了解を得て、人数を絞る
  3. 対応を決める: 原則として相談者が行為者と距離を置けるようにし、難しければ複数名で対応して1対1をつくらない。職員の知識やスキルの不足が背景なら、特性への知識と対応を学ぶ機会をつくる
  4. 説明し、話し合う: 必要に応じて第三者委員や相談支援事業所、行政のケースワーカーに立ち会ってもらう
  5. 見守り、共有する: 再発がないか観察を続け、プライバシーに配慮して事業所内で共有し、原因を分析する

解決責任者は施設長・所長などの管理者です。単独で難しいケースは、法人内の役職者会議などで検討します。

出典: マニュアル p.4〜5・p.8〜18

責めない判断と、障害特性への配慮

管理職向けの研修の手引きは、利用者や家族等によるハラスメントへの対応にあたり、障害特性等を考慮しながら、行動に至った背景や利用者の状態を踏まえて慎重に判断し、事業所の対応の結果で利用者の生活や健康の維持を阻害しないよう検討することを求めています。マニュアルが要因の例に挙げるのは、提供できるサービス範囲のすり合わせ不足、職員の知識不足、本人の不調や環境の変化による不穏です。

職員の側も責めません。「職員の支援スキルが低いから」「支援ではよくあることで大げさだ」と決めつけると、職員へのセカンドハラスメント(2次被害)になり得る、とマニュアルは書いています。グループホームの事例では、ホーム内に苦手な利用者がいた方について法人内での住み替えを行い、同様の行為が見られなくなったとしています。

出典: 厚生労働省『管理職向け研修のための手引き』p.4(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001133758.pdf)、マニュアル p.16・p.20・p.26

予防策:担当の複数化と契約時の説明

マニュアルが挙げる予防の取組です。

協議の場は新しく作らなくてもよく、苦情解決や虐待防止の委員会などが役割の1つとして担えば事務の負担を減らせる、ともしています。年間の委員会・研修の組み方は義務の研修・委員会の一覧にまとめています。

出典: マニュアル p.18・p.20〜21

厚生労働省の研修素材の使い方

厚生労働省のページには、マニュアル、職員向けリーフレット、管理職向けと職員向けの研修の手引き・研修資料、職員向け研修動画、調査研究の報告書が並んでいます。

管理職向けは、研修の前に、自事業所の対応方針と周知・啓発の方法、相談対応の体制、職員が安心して相談できる仕組み、発生要因の分析と解消の取組の4つを点検し、未整備のものは手引きの参考事例を見ながら整理する、という使い方です。職員向けは、研修資料(本編)を配って事業所の基本方針を講師が説明し、チェックリストを研修内か研修後に回収します。回答を見て面談や声かけにつなげることも一案、とされています。

進める順番は、方針と対処の内容を決める、管理職研修で体制を点検する、職員研修とリーフレットの配布、契約書・重要事項説明書の見直し、が組みやすい形です(Happiter株式会社の整理です)。相談窓口の連絡先の掲示が、別の貼り紙の下に隠れていないかも見ておきます。

出典: 厚生労働省『管理職向け研修のための手引き』p.5〜7(前掲)、同『職員向け研修のための手引き』p.5〜7(https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001133760.pdf)
この記事は国と自治体の公表資料を読んで整理したものです。ハラスメントへの対応や、契約・サービス提供の判断は事業所が行います。必要に応じて、指定権者・都道府県労働局・弁護士などの専門家に相談してください。
資料2点を、メールで受け取る(無料)
「通知が来てから当日までの段取り表」と「確認される書類の一覧(7サービス)」を、メールアドレスだけで受け取れます(数分以内にURLをお届けします)。
資料2点を、メールで受け取る(無料)
運営指導の、通知が来てからの段取り表と、確認される書類の一覧(7サービス)。
Happiter株式会社(代表 茂呂史生)からメールで届きます。制度改定と道具の新着のお知らせ(月2回まで)も届きます。止めたい時は、届いたメールに返信するだけです。
入力はメールアドレスだけ。このメール欄からお電話をすることはありません。名簿の管理とメールの送信には Google と Make の仕組みを使い、それ以外の第三者には渡しません。個人情報の取り扱い
「うちの職員はパソコンが苦手で…」で、止まっていませんか。
議事録も計画書も、最後は職員が打ちます。その職員が怖がらずに道具を使い始める入口の60分を、研修の第1回「ICTって何? 怖がらずに使える"道具"の話」そのまま・無料で。11月16日(月)10:00〜11:00・Zoom。顔出し・発言は任意、聞くだけでも大丈夫です。参加しても、研修の申し込みは義務ではありません。
11/16(月)の無料体験会に申し込む →
AI×ICT伴走研修(全20回)
全20回(各60分・1事業所単位・半年〜1年)の伴走研修を行っています。相談の窓口と流れをチームで見える化する回は、第7回「報連相とタスク管理を"見える化"する 〜ChatworkとGoogleで回るチーム支援〜」です。20回のタイトルと料金は研修のページに。
20回のタイトルと料金を見る →
茂呂史生
茂呂史生 Happiter株式会社 代表。2005年から訪問介護・放課後等デイサービス・グループホーム・就労支援を自分の手で立ち上げ、4社を経営。著書『世界を変える子どもたち』。

この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。ハラスメントへの対応は事業所が判断します。必要に応じて、指定権者や専門家に相談してください。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。