障害福祉の事業所がDX研修に人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)を使う時の条件と流れ(令和8年度)
出典: 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)のご案内(詳細版)」令和8年8月3日版(以下「詳細版」)表紙・p.2・p.10・p.13・p.17(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731978.pdf)、「令和8年8月3日からの変更点について」LL080803開企01(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731966.pdf)
事業展開等リスキリング支援コースとは(令和8年度)
事業主が雇用する労働者に、事業展開やDX化などに伴って必要になる専門的な知識・技能を身につけさせる訓練を、計画に沿って行った場合に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。人材開発支援助成金の中の1つのコースで、「令和4年~8年度の期間限定の助成金として創設」されました。
対象になる訓練は、次の3つのいずれかです。
- 事業展開を行うにあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練
- 企業内のデジタル・DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合に、これに関連する業務に従事させる上で必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練
- 企業内の人事・人材育成に関する計画に基づき、今後従事する予定の職務に必要となる専門的な知識・技能を習得させる訓練(中小企業は、計画について認定経営革新等支援機関の確認が必要)
記録・計画・請求の業務にデジタル技術を取り入れるための研修は、2つ目(DX化)の考え方に沿って計画を組むことが考えられます。当たるかどうかは審査で判断されます。
出典: 詳細版 表紙・p.13、厚生労働省 リーフレット「事業展開等リスキリング支援コースのご案内」LL080408開企07(令和8年4月8日版)p.1(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001687619.pdf)
助成の率と上限
| 項目 | 中小企業 | 中小企業以外 |
|---|---|---|
| 経費助成(受講料など) | 75% | 60% |
| 賃金助成(1人1時間あたり) | 1,000円 | 500円 |
| 経費助成の限度額(1人1訓練・10時間以上100時間未満) | 30万円 | 20万円 |
- 経費助成の限度額は訓練の時間で決まり、100時間以上の訓練では上がります(詳細版 p.38)
- 賃金助成は、所定労働時間内に行った訓練の時間だけが対象です。所定労働時間外・休日に行った時間は賃金助成の対象外で、その時間の賃金は割増賃金を含めて適正に支払う必要があります
- 賃金助成の限度は、1人1訓練あたり1,200時間です
- eラーニング・通信制は経費助成のみで、限度額は中小企業15万円・中小企業以外10万円です
- 1事業所が1年度に受給できる額は1億円までです
- 消費税は助成の対象になりません
研修会社に受講料を払う形(事業外訓練)の経費助成は、1人あたりの受講料等 × 助成対象者数 × 助成率で計算します。対象になる受講料は、あらかじめ受講案内などで定められているものに限られます。
出典: リーフレット p.1、詳細版 p.2・p.10・p.17・p.29・p.32・p.38・p.39、人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)支給要領(R8.8.3)0505 p.20(https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001731981.pdf)
社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人は「常時雇用する労働者の数」で判定
中小企業かどうかは、主たる事業ごとに「資本金の額または出資の総額」か「企業全体で常時雇用する労働者の数」のどちらかで判断し、どちらかに当てはまれば中小企業です。医療・福祉はサービス業の区分で、資本金5,000万円以下、または常時雇用する労働者100人以下です。社会福祉法人・医療法人・一般社団法人など資本金を持たない法人は、労働者の数で判断します。判定は支給申請の時点の内容で行います。
出典: 詳細版 p.12
対象になる訓練の条件
10時間以上のOFF-JTで、時間の数え方に決まりがある
OFF-JTは、事業活動と区別して、業務の遂行の過程外で行う訓練です。計画した総訓練時間から、移動時間や助成の対象にならない内容の時間を除いた「実訓練時間」が10時間以上必要です。
- 昼食などの食事を伴う休憩時間は含めない
- 小休止(訓練の合間の1回30分以下の休憩)は、1日あたり累計60分まで含めてよい
- 開講式・閉講式・オリエンテーション(事務的な説明)は、1回の計画届あたり累計60分まで含めてよい
- カリキュラムの一部に対象外の内容が含まれる場合、その時間は除き、除いた後で10時間以上が必要
出典: 詳細版 p.11・p.13・p.28・p.29
受け方: 対面か、オンラインでその場で質問できる形が基本
| 実施方法 | 時間の要件 | 受講の要件 | 賃金助成 |
|---|---|---|---|
| 通学制・同時双方向型の通信訓練(オンラインで、その場で講師に質問できるもの) | 実訓練時間10時間以上 | 実訓練時間の8割以上を受講 | あり |
| eラーニング・通信制 | 標準学習時間10時間以上、または標準学習期間1か月以上 | 訓練期間中に修了 | なし |
eラーニングは、受講管理のシステム(LMS)で進み具合を管理できることが条件で、特定の事業主向けに作られたものは対象外です。録画を見るだけの講座(eラーニング・通信制を除く)や、教材(教科書等)を使わない講習も対象外です。年次有給休暇を与えて受講させた訓練も対象外です。
出典: 詳細版 p.22・p.29
令和8年8月3日以降の計画: 「職務に直結」しない内容は対象外
令和8年8月3日以降に提出する計画では、DX・GX化に関する訓練であっても、次の目的のものは対象外になりました。
- 職業や職務に間接的に必要となる知識・技能を習得させるもの
- 職業や職務の種類を問わず、職業人として共通して必要となるもの
厚生労働省は、次のような例を示しています。
| 訓練の例(厚生労働省が示す理由) | 扱い |
|---|---|
| 生成AIを活用して商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ、営業担当者向けの訓練(具体的な業務に直結し、そのまま活用できる) | 対象 |
| 生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練(特定の業務への具体的な適用を伴わない) | 対象外 |
| DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練(共通知識の習得にとどまる) | 対象外 |
あわせて「訓練内容に沿って対象労働者を選定しているか」も確認されます。例では、CO2排出量の算定手順を学ぶ訓練を、その業務を担当する人に受けさせるなら対象、人事や営業の担当者に受けさせるなら対象外とされています。障害福祉の事業所に当てはめると、生成AIの使い方一般ではなく、受講する職員が担当する支援記録・個別支援計画・請求などの書類の作り方に結びついた内容か、その書類を担当する職員を選んでいるかが、分かれ目になると読めます(判断は労働局)。
出典: 「令和8年8月3日からの変更点について」LL080803開企01、詳細版 p.28
通常の事業活動・機器の操作説明は対象外
次のような内容は、「通常の事業活動」などとして対象になりません。
- コンサルタントによる経営改善の指導
- マニュアル等の作成・改善、社内の作業環境の構築・改善
- 社内制度・人事規則の説明
- 自社の業務で用いる機器・端末等の操作説明
- 既存のアプリやシステムを購入して、その操作方法を習得するだけのもの
- 文章・数値の入力や書式の変更程度の、初歩的な操作だけの訓練
一方で、自社の業務上の情報を訓練の題材として取り上げるだけで、業務改善の指導や成果物の作成につながらないものは対象外に当たりません(事業外訓練の場合に限る)。厚生労働省の例では、自社の財務諸表で財務分析の手法を学ぶ訓練は対象、分析結果から経営改善計画を作る場合は対象外です。研修の時間内に、自事業所の実際の個別支援計画や利用規程を作り上げる内容は、この「成果物の作成」「作業環境の構築」に当たりうるので、計画を立てる前に確かめておくと安全です。
出典: 詳細版 p.13・p.28
事業所側の条件
- 雇用保険の適用事業所であること
- 職業能力開発推進者を選任していること
- 労働組合等の意見を聴いて事業内職業能力開発計画と職業訓練実施計画届を作り、労働者に周知していること
- 事業展開等実施計画(様式第1-3号)を作ること
- 訓練期間中も、受講者に賃金を適正に支払うこと
- 審査に必要な書類を整備し、5年間保存すること。審査・実地調査に協力すること
- 受講者は、事業所の雇用保険の被保険者で、計画届の「対象労働者一覧」に載っている人であること
- 訓練経費の全額を、支給申請までに事業所が負担すること
出典: 詳細版 p.10・p.17
申請の流れと期限
- 準備: 職業能力開発推進者の選任、事業内職業能力開発計画の策定と労働者への周知
- 計画届: 訓練開始日の6か月前から1か月前までに、事業所の所在地を管轄する労働局へ。提出日は労働局に届いた日で、期限が土・日・休日の場合は翌開庁日が期限です。例として、訓練開始日が7月1日なら、提出期間は1月1日から6月1日までです
- 訓練の実施: 計画届のとおりに行います。日時・内容・場所などを変える時は、変更届を期限まで(変更前後の早い方の実施日の前日まで。受講者の追加は訓練開始日の前日まで)に出します
- 支払い: 支給申請までに、訓練経費の全額を事業所が支払います
- 支給申請: 訓練終了日(計画届の「訓練の実施期間」の最終日)の翌日から2か月以内(厳守)
- 審査: 確認する項目が多く、ほかの助成金より決定まで時間がかかるとされています。支給・不支給の決定は、不服申立ての対象になりません
計画届では、職業訓練実施計画届(様式第1-1号)、事業展開等実施計画(様式第1-3号)、対象労働者一覧(様式第3-1号)、事前確認書(様式第11号)に加えて、訓練カリキュラム・受講案内(実施目的、実施日時、訓練日ごとの内容と場所、実訓練時間数、受講料)、研修会社との契約書または受講案内と申込書の写し、研修会社から受け取った「訓練費用の負担軽減に係る説明資料」などを出します。支給申請では、OFF-JT実施状況報告書(様式第8-1号)、受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)、研修会社が記入する支給申請承諾書(様式第12号)、研修会社から説明を受けた資料一式の写しなどが要ります。電子申請(雇用関係助成金ポータル)にはGビズIDが必要です。
出典: リーフレット p.2、詳細版 p.10・p.41・p.42・p.43・p.44・p.45・p.46、雇用関係助成金ポータル(https://www.esop.mhlw.go.jp/)
研修会社を選ぶ時に確かめること
- 研修会社の要件: 民間の研修会社は、計画提出日までに定款・登記簿等の事業目的に教育訓練事業が書かれている日本国内の法人で、不正受給に関与した者が関与していないことなどが条件です
- 密接な関係: 申請する事業所と密接な関係にある研修会社に払う受講料は、経費助成の対象になりません。たとえば、事業所の代表者等が代表者等である研修会社、事業所が雇用する人が代表者等である研修会社、代表者等の配偶者・3親等以内の親族が代表者等である研修会社、親会社・子会社、議決権の過半数を持つ関係、訓練開始日の前日から3年以内に事業所の代表者等だった人・雇われていた人が代表者等である研修会社です
- 支給申請承諾書: 研修会社は、審査への協力と、不正受給に関与した場合に事業所と連帯して債務を負うこと・名称が公表されることなどに承諾する書類(様式第12号)を出します。承諾できるかを事前に確かめるよう、厚生労働省も案内しています
- 受講料の書き方: 経費助成は「1人あたりの受講料等」で計算し、対象は受講案内などで決まっている受講料に限られます。消費税は対象外です
- 価格と返金: 同じ内容なのに助成金を使う場合だけ受講料が高いなど、助成金の有無だけで差を付けた差額は、経費として算定されない場合があります。返金・アンケートの協力金・営業協力金などで事業所の負担が減ると、経費助成の対象になりません。厚生労働省は、助成金を使えば費用の負担がなくなるかのように勧誘する研修会社やコンサルティング会社に注意するよう呼びかけています
- 申請手続き: 助成金の申請手続き(申請書の作成、提出代行、審査への対応など)は社会保険労務士の独占業務です。研修会社が「無償で申請します」とうたっていても、受講料にその対価が含まれていると評価されれば、社会保険労務士法第27条の問題になります
- AIツールとのセット: AI研修の費用は対象経費ですが、AIツールの導入費用は対象経費ではありません
- 説明資料: 研修会社から受け取った負担軽減の説明資料は、計画届と支給申請で労働局に提出します
出典: 詳細版 p.10・p.20・p.21・p.32・p.42・p.46、支給要領 0505 p.20
令和8年度の改正点と、令和9年度の見通し
- 令和8年5月14日〜: 経費助成を申請する時は、受講料等の価格設定に関する疎明書(様式第28号)を出します
- 令和8年8月3日〜: この日以降に提出した計画届から、新しい支給要領が適用されます。DX・GX化の訓練でも、職務に間接的に必要な内容・職業人として共通に必要な内容は対象外になりました。受講回数は、同じ労働者について1年度(支給申請日を基準に4月1日〜翌年3月31日)に3回まで、そのうちeラーニングは1回までです
- 経過措置: 研修会社との契約や申込みが令和8年8月2日以前の場合は、対象外の訓練の扱いなどに、改正前(令和8年5月14日改正)の支給要領が適用されます
- 期間: このコースは「令和8年度末までの時限措置」(令和8年度末=2027年3月31日)とされています。年度をまたいで終わる訓練や、支給申請が令和9年度になる場合の扱いは、詳細版と支給要領には書かれていません(2026年10月時点)。2027年1〜3月に始める訓練を考えている場合は、計画を立てる前に管轄の労働局に確認してください
出典: 詳細版 p.2・p.39・p.46、支給要領 1401・1402 p.38、「令和8年8月3日からの変更点について」LL080803開企01
問い合わせ先
制度の内容や、自分の事業所の研修が対象になりうるかは、事業所の所在地を管轄する都道府県労働局(助成金の窓口)に相談できます。申請手続きを任せる場合は、社会保険労務士に依頼します。
出典: 厚生労働省「人材開発支援助成金」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html)、各都道府県労働局の助成金申請窓口(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/toiawase2.html)、申請様式(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1_00011.html)
「通知が来てから当日までの段取り表」と「確認される書類の一覧(7サービス)」を、メールアドレスだけで受け取れます(数分以内にURLをお届けします)。
この記事は、国の公表資料をもとにHappiter株式会社が要約したものです。助成の対象になるか、いくらになるかは、管轄の労働局の審査で決まります。最新の内容は厚生労働省・労働局の案内でご確認ください。誤りを見つけた方は お問い合わせ からお知らせください。
